公開 2024年08月29日  I 更新 2024年11月22日

ベトナム進出 現地法人の設立に関するスキーム(概要)

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目次

ベトナムで現地法人を設立・取得するには、①直接投資スキーム(新規に現地法人を設立する方法)と②間接投資スキーム(既存の現地法人の持分・株を取得する方法)という二つの方法があります。

それぞれのメリットとデメリットは、以下の通りになります。

1. 直接投資スキーム(新規に現地法人を設立する方法)

メリット

  • ブランド構築:新規に法人を設立することで、自社独自のブランドとイメージを構築しやすいです。また、間接投資スキームと異なり、既存企業のブランド等に問題がないかを検討する必要もございません。
  • 法令遵守の管理がしやすい:自社が直接設立するため、現地の法令やコンプライアンスを初期段階から適切に整備することができます。
  • 企業文化の構築:新規設立法人では、新規で従業員を採用することから、当初より教育等を含めて、会社の職場文化、企業文化を円滑に構築することができます。

デメリット

  • 時間がかかる:法人設立には手続・許認可(特に外資規制のある事業)の取得などの時間がかかり、事業開始までにタイムラグが生じることもあります。
  • 市場へのアプローチの困難:一から法人を作るため、ブランドの周知や、販路開拓、その他の取引先の確保などに時間やコストが必要になります。

2. 間接投資スキーム(既存の現地法人の株式・持分を取得する方法)

メリット

  • 即時に事業開始可能:既存の法人を買収することで、ベトナム現地市場へ素早く参入し、直ちに事業を展開することができます。
  • 現地のネットワーク活用:現地法人の既存ネットワークや人材、取引先関係を活用できるため、スムーズに事業を進めやすい傾向にあります。

デメリット

  • 管理・統制の困難さ:既存法人の文化や方針が既に確立しているため、完全なコントロールが難しく、経営方針の統一に時間がかかることがあります。
  • 法的リスクの引き継ぎ:既存法人の過去の負債や法令違反リスク、または隠れたリスク(不動産権利関係、訴訟問題など)を引き継ぐ可能性があります。
  • ブランド・評判リスク:既存法人のイメージやブランドに問題がある場合、それを引き継ぐことになり、再構築に時間と労力が必要になる可能性があります。

まとめ

  • 直接投資スキームは、長期的に自社独自の戦略で成長を目指す場合に適しており、ブランドの確立やフルコントロールが可能です。
  • 間接投資スキームは、スピーディに市場参入をしたい場合や、現地のネットワークやノウハウを活用したい場合に適していますが、既存法人のリスク管理がポイントになります。

 

01 - 直接投資スキーム

 

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スキームの概要

 

 

  直接投資には、①外資による100%単独での出資と、②ベトナム現地のパートナーと一緒に組んで合弁会社への出資という二つのケースがあります(上記の図の通り)。

§    外国投資家(日本の投資家)とは、ベトナムで投資活動を実施する外国国籍を有する個人の投資家、または、外国で設立する法人の投資家です。

§    外国投資家が出資するベトナム現地法人は外国資本を有する経済組織(FIE)といいます。

§    FIEは、外国投資家の保有割合によって、国内企業として取り扱う場合と、外国投資家と同じに取り扱う場合(以下、「外資企業」といいます。)に分けられます。外資企業として取り扱う場合には、当該外資企業は、外資規制や条件等を満たす必要があります。

FIEは、次の場合に該当すれば、外国投資家(又は外資企業)として取り扱います。

                   i.    外国投資家が定款資本の 50% 以上を保有している (F1)

                   ii.   F1 が定款資本の 50% 以上を保有する

                   iii.  外国人投資家と F1 が所有する定款資本の 50% を超える。

 

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直接投資スキームのメリット・デメリット

 

 

外資100%単独での出資

合弁会社への出資

メリット

·     外資100%単独で出資すれば、会社の全ての支配権は日本の投資家(出資者)にあります。そのため、日本の投資家が、単独で、会社のすべての経営判断を行えます。

·     投資活動や経営判断等は、迅速に対応することができます。

·     ノウハウや技術等をパートナーへの開示を避けることができ、秘密保持を確保することができます。

·    外資規制のある事業・分野(出資比率の制限がある投資事業・分野※例:広告事業)である場合は、合弁にすることで、その出資率の制限に関する問題を解決することができます。

·    事業展開、許認可取得、土地使用権確保等といった部分の現地パートナーのノウハウを活用することができる可能性があります。

·     パートナー企業の既存販路を利用することができ、迅速にマーケット開拓ができます。

·     資本負担やビジネス上のリスクをお互いに分担できます。

デメリット

·    単独で出資するため、事業に関するすべてのリスク等は、自らで負担しなければなりません。

·    ローカルの商習慣や市場などに関する知識が少なく、頼れるパートナーもない場合には、事業展開に要する時間等のコストが発生します。

·     経営判断や意思決定が困難であ(ベトナムローカルの経営者の商習慣、ビジネスの考え方等は、日本と異なり、日本側に同調することもありません。)、トラブルが発生しやすいです。

·     現地パートナー側の不正行為(不正報告、贈収賄、キックバック、架空取引等)が発生する可能性があり、それらのコントロールが困難です。

 

【注意事項】

·     ベトナムに進出する際に、単独で出資することができる事業と単独で出資することができない事業があるため、事前に確認する必要があります。

·    ベトナム現地パートナーと一緒に合弁事業を行う場合には、事前にパートナーの信用調査を行うことをお勧めいたします。パートナーの信用調査については【進出・投資_Q&A:ベトナム企業の信用調査をしたいですが、どうすればよいですか】をご参照ください。

 

02 - 間接投資スキーム

 

 

日系企業において、直接投資スキーム以外にも、実際に、間接投資スキーム(M&A)を選んで、ベトナム進出をすることは多くみられます。間接投資スキーム(M&A)には、①実質的なM&Aと②形式的なM&Aという二つに分類できます。

 

  •       実質的なM&A

        実質的なM&Aは、日本の投資家がベトナムの現地法人の持分・株を購入するか、または、組織再編(消滅分割、存続分割、新設合併、吸収合併)を通じて行われます。

        なお、M&Aによる投資の詳細については、【M&A】をご参照ください。

 

  •       形式的なM&A

                  i.    形式的なM&Aは、日本の投資家が迅速に事業を展開したい場合に選択するケースが多いです。具体的には、①ベトナム人の名義(会社のベトナム人従業員等)で100%のローカル会社を設立 (X社) → ②日本の投資家は、X社の100%の持分を購入する(M&A承認手続)→ ③X社が内資企業から外資企業に変更という流れで進めるケースです。

                  ii.   直接投資と形式のM&Aの比較

 

直接投資

形式的なM&A

手続の期間

すべての申請書類の準備期間を除いても、3か月程度の期間が必要です。

申請書類の準備期間(日本での各種書類の領事認証を含む)は、平均2週間程度です。

ローカル会社を設立するためには、1週間程度(早ければ3日間程度)ですので、迅速に事業を展開することができます。

その後の内資企業から外資企業に変更するための手続は、1.5か月~2か月程度かかります。

手続の複雑さ

合弁事業を行う場合には、

新規100%外資企業の設立と同程度の負担等が必要になります。

 

50%以下の持分・株を購入する場合には、M&Aの承認手続きを行う必要がありません。

 

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